ゼリーと胎児の記憶

 俺の母は機械でもある。産みの母のことだ。 俺の育ての母は受精卵を培養液に入れ、大きな試験管で俺を育てそこから取り出した。SF映画なんかでよくある、液体の入った円柱型の装置があるだろう。あれに近い。そしてその装置は、まだ…

北村倫理と助けられた女の子

 ビルの一階が駐車場になっているスペースは格好の隠れ場所だ。静かだし、車の影になってイーターからは見つからないし、避難し遅れた人を救助するヒーロー達の目に留まらないのもいい。私はこうやってイーター警報が出た地域に行ってこ…

2019年4月13日 放課後

「巡、どこか行くのか」 放課後、頭上から声が降ってきたので仰ぎ見ると、階段の上から頼城が覗き込むように下にいる俺を見ていた。「ああ、放課後はパトロールだろう」 しかし、まさかこの男が今日の予定を忘れていた訳ではあるまい。…