頼城さんがお酒飲む話

※ラクロワ4人婚です

「ただいま! かえったぞ!」
「お邪魔致します」
 玄関が騒がしくなったかと思うと紫暮と藤本さんが家に帰ってきた。なんか声の様子が変だ。巡くんと顔を見合わせて玄関まで迎えに行くと、顔を真っ赤にした紫暮を支えるように藤本さんが肩を貸していた。
「酒を飲んだのか」
「はい、先日成人されましたから……会食の場でお勧めされ、適切に飲まれていたようだったのですが会食が終わった頃でしょうか、気が緩まれたのでしょう、帰宅するころにはこうなっておりまして……」
「ただいまめぐる! しゅう! あいしてるぞ!」
『俺は?』
「もちろんえぬもあいしているぞぉ〜!」
 紫暮は真っ赤な顔でふらふらしながら玄関に置いてあるタブレットをなでている。Nが嬉しそうにぴこぴこ鳴ってる。うるさい。巡くんがキッチンに戻ってコップにお水をくんできて紫暮に渡す。
「ほら飲め」
「ありがとうめぐる……みずがうまいな……わがしゃでもしょうひんかしたい」
「ミネラルウォーターはもう売ってるだろ、しっかりしろ」
「むう……」
 藤本さんがふらふらしてる紫暮を心配そうに見ていたから、藤本さんの代わりに俺が紫暮を支えた。
「紫暮お酒くさい」
「らいじょうさんはくさくないぞ、しゅう」
「藤本さん大丈夫だ、あとはこっちでなんとかする」
「申し訳ございませんが、よろしくお願い致します」
「しゅう〜おおきくなったなぁしゅう。おれよりおおきくなって」
「くっ! つか! ないで!」
 べたべたと頭や顔をなでてくる紫暮の手を払いながらなんとか肩を貸しておっきいふかふかのソファーまで連れて行く。ソファーについたら紫暮が俺の肩に腕を回したままごろんと横になってしまった。俺も引っ張られて紫暮の上に倒れる。
「もう! 紫暮ばか?!」
「しゅう〜すきだぞ……あいしてる」
「分かったから離して!」
 ソファーの上でじたばたしてると巡くんがまたコップを持ってやってきた。
「塩とレモンを混ぜた水だ。体液に近い塩分濃度にしてある。飲め」
「めぐるありがとう、いただこう」
 紫暮はそのコップを受け取るとごくごくと一気に飲み干してぷはーと息をはいた。
「うまい! めぐるはてんさいだな!」
「ハハ、それを飲んだらとっとと風呂に入って寝ろ」
「巡くん、これお風呂に入れて大丈夫なの?」
「まぁ心配ではあるが……そのまま寝かせるか?」
 巡くんとふたりしてコップを持ったままうつらうつらと船をこぎ出した紫暮を見る。お風呂に入れると溺れそうだ。
「でも三人で寝るベッドには寝かせたくない、くさい」
「まぁひとりで寝てもらう他ないな」
「さんにんでねたい……」
「だめだ。ほら、寝るなら自分の部屋のベッドで寝ろ。どうする? 風呂に入るなら俺が世話を見るが」
「もうねむたい……」
「分かった。N、頼城の明日の予定は?」
『明日は十時から会議に参加する予定になってる』
「分かった、じゃあ八時にアラームをセット。朝風呂に入れよう。柊、頼城に肩を貸してくれないか。部屋まで運ぼう」
 紫暮を部屋のベッドまで運ぶ。その間もなにかふにゃふにゃ言ってたけどよく分からなかった。紫暮は酔っててもうるさい。部屋にたどり着いて紫暮のベッドに寝かせると、紫暮がしまりのないデレデレした顔でありがとうあいしてるぞと言った。
「ほんとうるさい」
「おやすみ頼城、電気消すぞ」
「ありがとうしゅう、めぐる、えぬ、おやすみ」
 電気を消して部屋のドアを閉める。
 俺たちももう寝ようか、と話して歯磨きをしたり片付けをしたりして普段は三人で寝てるベッドにふたりで入った。間接照明をNに消してもらうと、紫暮が好きなルームフレグランスの香りがするベッドルームはしんとしていた。三人で寝てもまだ広いふかふかのベッドはふたりだとちょっと大きすぎる。もぞもぞ寝返りを打っていると、巡くんが手に触れてきた。
「落ち着かないか?」
「ん……ちょっとだけ」
 巡くんの指を握ると、巡くんも俺の指を軽く握り返してくる。
「明日は多分、三人で寝られると思うぞ」
「……お酒、あんまり好きじゃないな、俺」
「ふ、頼城に言うといい、きっと飲まなくなる」
 指先から伝わる巡くんの体温が気持ちよくてとろとろと眠くなってくる。紫暮はいてもやだけどいなくてもやだからめんどくさい。きらい。でも、明日はベッドがすかすかじゃないといい。広すぎるベッドは紫暮よりもいやだから。おやすみなさい。