2020年斎樹巡誕生日
パーティを開くと前日から言っていた通り、頼城は朝食が済んだ談話室兼食堂に業者を連れ込んであっという間にパーティ会場を作り上げてしまった。花が至るところに飾り付けられ、陽気な風船が並び、お抱えのシェフによる立食形式のあれ…
パーティを開くと前日から言っていた通り、頼城は朝食が済んだ談話室兼食堂に業者を連れ込んであっという間にパーティ会場を作り上げてしまった。花が至るところに飾り付けられ、陽気な風船が並び、お抱えのシェフによる立食形式のあれ…
柊は昔っからかくれんぼが得意だった。人が寄りつかなさそうなところを見つけるのが得意なのだ。それで終わった頃にみんなでもう降参だ、と言って回るとひょっこり出てきて、控えめに笑う。俺の勝ち。あんまりそんなことが続くから、俺…
遠くから小さくさざなみが聞こえる。星の燃える音さえも聞こえてきそうな静かな夜だ。耳をそば立てれば、柊と巡の健やかな寝息も耳に届く。自分の家の所有する別荘やプライベートビーチを友人と利用することは何度かあったが、ここまで…
「夢を見たんだ」 隣を歩く頼城が唐突に言った。 雪が周りの音を吸収して静かな夜、電灯の下、濃い影を作った頼城が足元の雪を鳴らす。「どんな夢だ?」「巡が生まれる夢だ」 分娩室の前で、巡が生まれるのを今か今かと待っている夢だ…
敬にいが、伊勢崎家に行くと決まった。 その話を聞いた時、頭から血の気が引いて音が遠のくのが分かった。そして段々と音が戻ってきた時、血と一緒に湧き上がってきたのは怒りだった。なんで、どうして、よりによって、なんでお前が!…
夏休みが始まった。けど、俺には関係なかった。 テストの結果が悪いこと、授業の出席日数が足りないこと、ラクロワが遅れがある生徒には手厚い対応を取ること。そういう事情が重なって、夏休みに入ってしばらく補講が続くことになった…
自転車に乗って海まで行こう、と言い出したのは誰だっただろう。金曜夕方のニュースキャスターが海の日ということで、海の映像をバックに笑顔で話しているのを見て、誰かが海に行きたいと言い出したのだ。「えー海なんてリア充の行くも…
梅雨が明け、徐々に暑くなり始めた土曜の昼過ぎ。食堂に降りると、良くんがボウルに缶詰をあけて何か作っているところだった。シロップのうす甘い香りが辺りに漂っていて、美味しいものが食べられそうな予感になんだかワクワクした気持…
眠れない。ざあざあと降る雨の音に邪魔されているためか、それともただ単に神経が高ぶっているためか。イーターと戦った日にはたまにあることだった。眠れるように目を瞑って寝返りを打ち続けるのにも嫌気がさしてきたし、なんだかお腹…
俺の母は機械でもある。産みの母のことだ。 俺の育ての母は受精卵を培養液に入れ、大きな試験管で俺を育てそこから取り出した。SF映画なんかでよくある、液体の入った円柱型の装置があるだろう。あれに近い。そしてその装置は、まだ…