つめの手入れをする柊巡
柊は俺の手が好きらしい。よく指やつめの形を確かめるように触っているし、実際「巡くんの手が好きだ」と言われたこともある。自分ではよく分からないが、手にまつわる様々なことが「巡くんらしくて」好きということらしい。 自分では…
柊は俺の手が好きらしい。よく指やつめの形を確かめるように触っているし、実際「巡くんの手が好きだ」と言われたこともある。自分ではよく分からないが、手にまつわる様々なことが「巡くんらしくて」好きということらしい。 自分では…
年々派手になる誕生日パーティー対策に「今年は極々小規模で」と伝えたところ、なぜか頼城がコックをやることになったらしい。 いわく小規模なパーティといえばホームパーティで、ホームパーティといえばホストが料理をして持てなすこ…
まったく失礼しちゃうよね、と僕は思った。 誰も彼もが僕と顔を合わせるとすぐにお菓子を投げつけてくる。トリックオアトリート。イタズラの予防。先制攻撃。まるで僕がイタズラ小僧みたいじゃないか。ひどいなぁ僕だって一応TPOは…
ヒーローを始めてから、毎日レポートを書くようになった。それは毎日のように起こる戦闘や訓練での気づきをまとめる目的のもので、決して上手くはいかない自分の未熟さを、せめて得意分野の分析で補おうとしたのがはじまりだった。「つ…
ちりり、ちりりと音がする。 ふと携帯から顔をあげると、霧谷くんが食堂の窓際で椅子に乗りながら風鈴をつけているところだった。「ただでさえセミのどうにもならないうるささで参るのに、更にそこに音を重ねるつもり?」「うるさい?…
夏の朝は涼しくて好きだ。静かで、鮮やかで、過ごしやすい。 いつも通り早起きすると、珍しいひとと洗面所で鉢合わせた。「神ヶ原サン、おはよう」「やあ霧谷くん、おはよう。早いね」「神ヶ原サンも。なんでこんな早くにいるの?」「…
※ラクロワが三人婚してる前提の話です 今夜はどうやら流星群が流れるらしいとニュースキャスターが言っていたから、少し外でも歩こうか、と上着とマフラーを引っ掛けて外に出たのが数分前。流石にそんなに見えないんじゃないか、だ…
ぜいぜい、ヒューヒューと喉が鳴る。息が苦しい。仰向けに寝ていることも横向きになることも苦しくて、寝返りばかりを繰り返す。ゴホゴホ、と喉の奥からせり上がった咳が静かな部屋の中に残響を伴って、時計の秒針の音と混ざって不健康…
四月も半ばだというのに、今日は朝から空気が冷たかった。ガタガタ動く窓、ザンザンと降る雨、ゴロゴロと鳴る雷。ひどい天気だ。昼なのに暗い外を見ていると、メッセージの着信があった。巡くんからだった。『天気が酷いが、そちらは大…
春になると至る所で赤色の商品を目にする機会が増える。桜、いちご、あるいはその混合といった具合に、春の訪れを知らせる商品には赤もしくはピンクが適しているらしい。愛飲している紅茶メーカーのwebサイトにも季節限定のベリーを…